gさんについて

先週はひどかった。gさんの影におびえながら風呂に入ったり(私が風呂場に閉じこめていた、火曜)、見えないgさんの存在に脅かされながら風呂に入ったり(私が閉じこめたままでいると思いこんでいた、水、木、金)、突然いるはずのない場所にgさんがいるのを見つけて飛び上がったり(以下、土曜)、その後いちいち視界に出てくるgさんにキーっとなってgさん捕獲用スーパーアイテムプリングルス缶となんか棒状のダンボールを手にgさんを追い詰めていたらまた風呂場の入り口の扉の下の微妙な死角に入りやがって、さっさとオレの視界外に逃げてくれりゃあいいもののいちいち影からこっちの様子を伺っててもう我慢がならなかったので、つい出来心で10年以上前に買った普段は絶対使わないキンチョールとか出してしまい(私は余計な殺生は極力避けたいと思っているので、普段は生け捕りにして外に逃がしている)、シュっといたずらに吹きかけてみたら、なんかgさん怒ったらしく、キーとばかりに壁を登り始めたかと思うと、は、は、は、
羽根を! 
広げて! 
こっちへ! 
飛んできたギャーーーーー!!!!!







それからは死闘でした。恐怖にガタガタ膝をふるわせながらやみくもに飛びまくるgさんと戦いました。キンチョールはそれでも多少は効くらしく、浴びせるごとにgさんの動きが尋常じゃなくなっていって、それでもぐるぐる部屋の隅っこを逃げまどいまくります。私はこっちに向かってくるたびにgさんにキンチョールの毒の霧をお見舞いし、gさんは部屋の隅を右へ左へとかさかさかさかさ音を立てながらさまよっていました。動きの弱くなったところをプリングルス缶で……!とか思っていたのですが、gさんの動きは元気で余裕があったときに比べ明らかに気狂いじみたすばやさを保ち続けていて、プリングルス缶での捕獲は叶わず、しかし親戚の人がなんかタオルケットかなんかくれたときの紙製の箱の中箱とふたの隙間に逃げこんだので、コレ幸いと私は箱の上に重しをのせ、gさんを隙間から逃げれないように閉じこめました。そして浴びせる毒の霧。gさんの触覚が一本隙間から飛び出ています。gさんはまだそこにいます。そして時々かさかさと動こうと試みているようですが、動けないようで、触覚がわずかに動くものの引っ込んだり消えたりすることはありません。時間をおいて、なんども浴びせる毒の霧。私が普段コレを使わないのには理由があります。以前コレでしとめたgさんはひっくり返ってもまだ足を動かしていたので、私はそのまま一晩放置しました。しかし翌朝になってもgさんの足は動いていました。私は仕事に出かけ、帰ってきました。まだgさんの足は動いていました。見なかったことにして寝ました。翌朝、まだgさんの足は……。ということを経験してから、私はコレでアレするのはやめようと思ったのです。そしてホウ酸団子に手を出すのですが、コレはコレでまた相当にアレな兵器であって、これでのどを枯らして風呂場に立てこもって弱り続けながら私を脅かし続けたおばあちゃん?gの死を見届けてからというもの、やはりコレも使いたくないという結論に達したのです。


その後、私は箱の隙間でかさかさ動き続けるgさんの音を聞きたくなかったので、普段あまりしない水場の掃除をしたり、台所で髪を切ったり、風呂場の掃除をしたり、風呂に入ったりしていました。そして箱の隙間でぐったりしているであろうgさんのことは考えないようにしてニコニコをみたり、漫画を読んだり、寝たりしました。


怖いのでまだ箱のふたはあけていません。どれくらい放置しておけばgさんは確実に息絶えてくれているでしょうか。というかふたをあけて、gさんの亡骸を処理しなければならないのが嫌でしょうかないのですが。gさんは亡骸になっても怖いのです。私にとってのgさんの亡骸は、いつ生き返って私に向かって攻撃してきてもおかしくない、そういう存在なので。