オレンジの部屋


「この部屋はいつもオレンジだね」
「カーテンがオレンジだからね、いつも閉めきってるし…って、なんでパンツ脱いでんの!?」
「え? だって此処はそういう場所だよね?」
「どういう場所だよ! つーか脱いだの放るな!」
「だってこの部屋クーラーないんでしょ?」
「ないよ!」
「キミだっていつも全裸なんでしょ?」
「全裸だよ!全裸だけどオレはいいんだよ! 部屋主なんだから」
「じゃあさっさと脱げばいいじゃん」
「いやだから……いまアンタが脱ぐのはまずいでしょ!?」
「なんで?」
「なんでじゃないよ! とっとと穿けよほら!」
「あー、あたしのパンツ触ったーえっちー」
「えっちー、じゃないよ! アンタが放るのが悪いんだろ!」
「……ナニコレすっごいほこりだらけなんですけど?」
「適当に放るからだよ!」
「ちょっと洗ってくるー」
「まてまてまて! 洗ったら乾くまで穿けないよね!?」
「うん、なんかテキトーに貸してちょ(じゃじゃーぱしゃぱしゃ)」
「アンタに貸せるパンツはないよ!てゆーか洗ってんじゃねーよ!」
「おマタのとこゴワゴワすんのやだからブリーフ?みたいなのがいいんだけど」
「(想像した)ないないない!ブリーフはない!」
「じゃあ……しまぱんとかでいいや」
「いやいや持ってないから!」
「えー、持ってるんじゃないのお? ネタで冷やししまぱんとか買ったりしてないわけ?」
「してないしてない!」
「……雑誌の付録のやつとか、ホントは持ってるんでしょ?」
「持ってないわ!」
「つまんないやつだなー、有事にそなえてそういうものって常に用意しておくものでしょ?」
「コレいま有事なの!?」
「じゃあいらない靴下とかでいいから」
「靴下? えっ、靴下をどうするの?」
「ちょきちょきちょき」
「おいおい何ハサミで切ってんの!」
「よっこらしょっと」
「穿いたー!!」
「うーんまあこれでいいか」
「あ、なんか割とそれっぽい」
「……穿き心地最悪。やっぱ没」
「結局脱ぐのかよ! つーかゴミ箱にダンクすんな!」
「え?これまだ使う気?」
「使わないよ! 使わないけど……こんな最期あんまりだろ!」
「靴下に同情されても……つーかそれ既に靴下ですらないし」
「そうしたのはアンタだよね!?」
「キミがしまぱん持ってないのが悪いんでしょ?」
「オレが悪いの!?」


……みたいな夏を送りたいだけの人生だった。