袖ヶ浦のびろ学園

高校の頃、「袖ヶ浦のびろ学園」という施設へ見学に行ったことがあります。
そこは、「第二種自閉症児施設」と呼ばれる施設です。さっきネットで調べたら、このタイプの施設は全国に2箇所しかないそうなので、私はずいぶん貴重な体験をさせてもらったのかもしれません。
私は、千葉県の袖ヶ浦町(現在は市)で生まれ育ったので、この学園の存在は、子供の頃から知っていました。山の中を車で通ると、たいていその看板を見つけることができたからです。で、その看板を見るたびに、子供心に「なんなんだろ、あれ……」と興味を持っていました。たぶん難しい漢字の羅列が醸し出す不思議な雰囲気に惹かれたんだと思います。そして、それからというもの、ずっとその存在が気になっていたのですが、高校生の時、ボランティア同好会が見学に行くということで、そこに所属する知人に誘われるまま、のこのこと私もついていくことになりました。
施設は深い森の中にありました。施設の人に案内してもらいつつ、施設の中を一通り見学し、そこで生活する人たちに会いました。突然奇声をあげてこちらにかけてくる子供、静かに遊んでいる子供。「部屋の中で同じ格好のまま動かずに一日を過ごす人」もいるのだと案内の人が教えてくれました。
私はそのときそれらの光景をみてかなり青ざめていたらしく(一緒に見学していた人が私の状態を見てびっくりし、心配してくれたりした)、実際それは私にとって衝撃的だったのですが、なぜそんなに衝撃的だったのかは正直よくわかりません。何か自分と合い通じるものをそこで見た人々に嗅ぎ取ったからかもしれません。
その後、施設で生活する人たちが作った作品(粘土細工とか絵とか)を見たり、施設や自閉症に関するレクチャーを受けたりして、見学は終わりました。
そして帰りのバスの中で、この見学に誘ってくれた知人が私に言いました。
「あの人たちはかわいそうだね。普通の人たちが送っているような生活ができないんだもの。僕らが普通に楽しむような娯楽とか、恋愛とか、普通の幸せとか、そういうものを知らないんだもの」
私はそんな知人の言葉を黙って聞いていましたが、心の中で「それは違うだろ」と思っていました。彼らには彼らの世界があり、僕らとは違う楽しみや娯楽があるだろう。僕らが彼らを上手く理解できないように、僕らの理解を超えたところに、彼らの楽しみ、娯楽、幸せ、そういったものがあるだろう、と。


……これを書きながら、自閉症を扱った絵本を子供の頃に読んだことがあったのを思い出しました。それは自閉症についてすごくわかりやすく描いてある絵本だったと思うのですが、残念ながら題名を失念しました。『はだしの〜』とか『〜の天使』とか『〜の王様』とかそんな題だったような気がするんですが、ネットで探しても出てこなかったので、もしかしたらまったくの勘違いかもしれません。


2011.11.16 追記
思い出しました。『はだかの天使』でした。
もう旧版、新装版ともに絶版のようですが…。内容も自閉症児の話だったかどうか怪しいです。アマゾンの解説では「リョウくんは赤ちゃんの時高い熱をだしたのがもとで、ちえがおくれてしまいました」となっています。

はだかの天使 (1969年) (新日本こどもの文学〈7〉)

はだかの天使 (1969年) (新日本こどもの文学〈7〉)

はだかの天使 (新日本にじの文学)

はだかの天使 (新日本にじの文学)